上田市鹿教湯温泉にあったカレーの名店「白扇」。女性店主が営んでいたこの店は、バングラデシュ人直伝のレシピを日本向けにアレンジ。大量の玉ねぎをじっくり炒め、さらにスパイスを加えて数時間煮込むという、手間をかけた味を求め、そして朗らかな店主に会いに、遠方から通う熱心なファンもいたほどだ。
ところが2017年、店主が急逝。常に笑い声が響いていた店の時間は、その時から止まったままだった。そんな伝説のカレーが今年5月に電撃復活。店の時間が、実に1460日ぶりに動き出した瞬間だった。店主の味を引き継いだのは、平日は「大王わさび農場」で働く濱重俊さん。
店主が残してくれたレシピを元に試作を繰り返し、徐々に白扇の味に近づけていった。「当時の味を知る人たちにやっと合格点をもらえたので」5月2日に再オープン。
「この場所は千鶴子さんの預かりもの。僕がまず時間を動かし、次につなげる。それが俺の使命です」(濱さん)。
濱さんが次の世代へと紡ぐ「幻のバングラデシュカレー・オリジン」(1,250円)。当時のレシピそのまま、玉ねぎと5種類のスパイスで作ったルーに農家直送の季節野菜の素揚げ、無農薬の発芽酵素玄米のセット。
当時の味を知る人もそうでない人も、きっと同じことを思うだろう。
—なくしたくない、なくしてはいけない味— があるのだと。
ちなみにお米は、伊勢神宮のご神米、台風をうけても倒れなかった奇跡のお米「イセヒカリ」。たまたま知り合った東御市の「名もない農家」の廣田さんが作っており、高価ではあるが「価値があるお米だから」とお店で使うように。ちなみに県内で「イセヒカリ」が食べられるのはこの店だけだ
当時のレシピ。メニューも当時のものを再利用。表紙には千鶴子さんの想いが書かれている。
営業は週末・祝日10時~16時30分。温泉とカレーを楽しみに今週末は鹿教湯温泉へでかけてみてはいかがだろう。
■カレーの店 白扇(ハクセン)
●住所
上田市鹿教湯温泉1428・2
●電話
090・4161・0022
●営業時間
金・土・日曜、祝日10時~16時30分
●定休日
月~木曜
●駐車場
近くに公共無料Pあり
●備考
キャッシュレス不可
※本記事は雑誌「月刊長野Komachi」(7月25日発売号)の内容を転載したものです
掲載の情報は公開日現在のものです。最新の情報は施設・店舗・主催者にご確認ください。